Vol.2 — When a Tool Becomes Essential

Vol. 2 — 道具が、なくてはならないものになるとき

kitt is a premium Japanese sweatshirt brand, made in a Wakayama knitting factory using vintage 1970s machines whose particular settings — refined over decades — produce a fabric that cannot be arrived at by other means. This is the story of how that fabric became a shop — and how the shop found its name.

和歌山に、妻の実家のニット工場があります。

今は義弟が三代目として工場を継いでいます。
1970年代から動き続けるヴィンテージの編み機は、懐かしさのために残されているわけではありません。

他の方法では出せない生地が、今もそこでは編まれています。

その工場から生まれた、静かなブランドがあります。
kitt。

「kittしか、着たくない」

生地は驚くほど軽く、柔らかい。
それでいて、ちゃんと芯がある。

繰り返し着ても形が崩れにくく、洗うたびに少しずつ身体に馴染んでいきます。

でも、私がkittに確信を持った理由は、技術的なことではありませんでした。

妻が体調を崩していた時期、ふと、こんなことを言ったのです。

「kittしか、着たくない。」

その瞬間、服は「装うもの」ではなくなりました。

安心に近いものになった。

どこか、建築に近かった。
身体を守り、気持ちを整える構造。

これを、もっと多くの人に届けたい。
そして、自分が本当に信じられるものだけを扱いたい。

五叉路の建物との出会い

物件を探し始めました。

半年近く、いろいろな場所を見て回りました。
けれど、どこもしっくりこなかった。

以前から気になっていた建物がありました。

下鴨の五叉路の角に立つ、淡いグリーンのタイル張りの建物です。

かつて煙草屋だったその場所は、1912年から、ずっと交差点を見続けてきました。

当時、煙草屋は、人の流れが集まる角地にだけ許されていました。

角を持つことは、商いを持つことでもあった。

最初に見たとき、まだ自分の準備ができていませんでした。

それでも、その場所は頭の片隅に残り続けました。

数ヶ月後、もう一度前を通ったとき、建物はまだそこにありました。

それが答えのように思えました。

この場所のこと

建築士として、空間は決断のあとからついてくるものだと思っています。

敷地は細長い三角形でした。
街の隙間に、楔のように差し込まれている。

空間は三つの帯に分けました。
高床の平台、通路、そしてカウンター。

狭いけれど、奥に向かって深さがある。

西側の一角は、あえて壁をつくらず、交差点へ開いています。

半分は街。
半分は店。

その境界が、少し曖昧になるように。

リノベーションのあと、一面の壁をライムイエローに塗りました。

鮮やかで、温かく、少し意外な色です。

100年以上立ち続けてきた建物の中で、小さな宣言のようにも感じていました。

ハンガーラックは、ジャージーニットの構造をなぞるように設計しています。

まだ、誰にも気づかれていません。

それでも、省くことができませんでした。

カウンターはマットグレー。
床はブラック。

古い柱は、昔からそこにあった場所に、そのまま残しています。

昔から好きな、ある画家がいます。

街の中にありながら、どこか切り離されたような光の描き方。

設計をしていた間、その感覚を少しだけ意識していました。

SMOKEという名前

店の名前を考えたとき、最初にあったのは建物でした。

もともと煙草屋だった。
だから、SMOKE。

でも、それだけではありませんでした。

毎日、同じ街角を撮り続ける男の映画があります。

同じ場所でも、光は毎日違う。

その感覚が、長い間ずっと心に残っていました。

この名前には、建物の記憶と、ものの見方の両方が入っています。

今も毎日、店の前の五叉路を撮っています。

同じ角。
違う光。

kittは、日本唯一の常設取扱店SMOKEにて、通年お取り扱いしております。
オンラインストアより、京都から世界へお届けします。

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